「絵のおはなし」では、ときどき絵に関わることをおはなししています。今回は「絵のみどころ」について…
絵を眺めるとき。まっすぐに目が行くところがありませんか。それが「絵のみどころ」。西洋でも東洋でも、画家は必ず「みどころ」を作ります。伝えたいメッセージがあるから、「ぱっ」とみて「わかるぅ~」でないといけないのですね。「みどころ」をモノづくりの言葉におきかえると、「テーマ」とか「主題」という言葉になります。つまり、ぱっとみて目が行く「みどころ」は、その絵の「テーマ」といえるでしょう。
「みどころ」がわかれば、「テーマ」がわかる♪ さぁ、鑑賞してみよう!
この絵の「みどころ」はどこでしょう?
そうですね。「ぱっ」と目がむかうところは、この作品のタイトルにもなっている通り、「放水」です。特に、放水のでているところに目がむかうかと思います。だから、「みどころ」は厳密にいうとダムの放水部分周辺で、ダムと勢いよく出る放水のコントラストがテーマであることがうかがえます。
「みどころ」は、構想段階で考えられ、描き始める前に小下図で表現し確認します。本制作も「みどころ」は常に意識され、絵を仕上げていくことになります。ということは、力をめいいっぱいいれる、繊細な仕上げの一手も、「みどころ」部分かと推測できます。仕上げ部分には、胡粉という白の絵具が盛り上がり、その質感が放水の激しい表現と化してあらわされています。日本最大のアーチ式ドームダム・黒部ダムの優美な曲線や形に「対」を成しながら、流れる水を主題としてこの作品は描かれているのです。
この絵のみどころは、「S字峡」。絵でみどころ周辺を眺めていると、さまざまなことに気付いたりもします。絵には「みどころ」からはじまって、画面周辺に目が動いて鑑賞が深まっていくように形や色などが構成してあります。このことを導く線と書いて「導線(どうせん)」といいます。目はS字峡からその周辺の峡谷の形に目がうつっていくのですが、よくみると、この絵には水平上の直線が走っていることに気付くようになっています。ちなみに、この水平上の直線はなにかというと、「日電歩道」です。谷を切り開いて作った道で、幅はわずか80センチほど。峡谷の奥深さと紅葉の様子が輝くばかりに美しい色彩で描かれていますが、そっとこの日電歩道に目が留まるような作品になっています。
さて、今回の「みどころ」の「絵のおはなし」、いかがだったでしょうか。現在の表現には、「みどころ」がないものもあるかもしれませんが、そのような絵に出合った時は、逆にみどころがないところがテーマであり、コンセプトであると読み解くことができます。このように、作品鑑賞の方法のひとつとして、「みどころを探す」鑑賞の仕方はテーマを探るうえでおもしろい。ぜひ、おススメします!!
お知らせ。
「黒部峡谷 日本画展」常設展開催中!!
入館料 大人610(510)円 高校・大学生510(410)円 中学生以下無料
()内は20名以上の団体料金
開館時間 9:00~17:30(入館は17:00まで)
休館日 10月31日まで、無休。8月29(木)、30日(金)お休み。8月31日(土)以降、企画展となります。
企画展覧会‼
8月31日からはじまる企画展覧会は、今回紹介いたしました田渕俊夫先生の作品展です。楽しみですね!!
「令和記念特別展 田渕俊夫—至極の日本画」
会期 2019年8月31日(土)~10月14日(月・祝)
入館料 一般1000円 高校・大学生800円 中学生以下無料
開館時間 9:00~17:30(入館は17:00まで)
休館日 期間中無休